航空界の様々な分野で人材の育成に関わる取り組みが行われていますが、どれも思ったような成果が得られていないなかで従来型の教育を見直し、新たな教育方法について議論し、その研究成果を発表する場を立ち上げる時期ととらえ、「航空教育学会」を設立いたします。
航空教育学会の設立に関して以下に詳しく述べます。
- 潜在的な航空教育研究への要望の高まり
航空人材の潜在需要は非常に大きく、航空各社、IATAなどの調査によると今後30年間の航空交通量の増大は顕著であり、特にアジアにおける航空交通量の増大が非常に顕著であると予想されています。
しかしながら現在航空の世界では、高齢化によるパイロットの不足、慢性的な航空管制官の定員割れ、熟練した整備士の不足、ならびに直接整備そのものを担当するのではなく、整備業務を管理する人材の大幅な不足が言われています。さらに現在急速に空港の民営化が進められていて空港管理を行う人材の不足も言われています。特にポストコロナに於いて、航空界に付随する様々な業務を行う者に対する社会的ニーズもかなり高いと思われます。
従来航空の世界では、教育を行う者と教育を受ける者が一対一のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が教育の中心で、教え方は属人的で標準化されておらず、優秀な航空技術者の育成には非常に時間がかかりました。また、同時期に大量教育ができないため育成可能な人員も非常に限られたものとなっていました。
以上をふまえ、教育の標準化をはかり、社会の要請に応じた航空界の人材を育成していくために、確固たる基礎研究を基盤にした上で、応用的展開を計り、航空教育の基礎研究から応用研究にまたがる学会を立ち上げる必要があると考えます。
- 社会的な存在としての新学会の役割
学会の設立は、教育の新しい手法が広くいきわたり、航空教育の平準化、効率化につながります。教育を受ける者にとっても負担の少ない方法で教育を受けることができるようになります。
従来、航空関連業務に従事する者、特にパイロットや航空管制官、整備エンジニア、研究者、設計者、製造スタッフなどの航空技術者の教育には、年単位、十年単位の時間が必要とされ、社会情勢の急激な変化に対応することは不可能でした。学会設立により高度な教育方法を研究することにより将来的に教育の効率化を目指します。
学会は、航空関連業務従事者や航空技術者などの教育に関わる者にとって知見・業種を跨いだ新たな交流の場となり、学会の英知を集めた組織的対応が可能となり、航空教育研究に基づく「高度専門職」育成の新たな仕組みを作っていきます。
- 新学会の対象領域と既存学会との関係
本学会では学術研究ではなく、パイロット、整備技術者、航空管制官、客室乗務員、空港スタッフ、地上スタッフ、設計者、製造スタッフなどの実務者育成を対象とした教育についての研究、実務に寄り添った身近で実践的な教育に軸足を置きます。
また、教育に関連する学会は多数ありますが、本学会は航空関連業務従事者、航空技術者などの育成のための教育研究に特化した学会です。
本学会が対象とする学問領域は、「知覚」「認知」「記憶」「言語」「思考」「教育方法」「教育機材」などが挙げられますが、航空のみではなく隣接科学(教育学、心理学、認知学、失敗学、安全学、神経科学、コンピュータ科学、社会学など)を専門とする研究者で航空技術者の教育に興味を持つ研究者の参加も可能です。
- 学会の事業
・航空教育に貢献した会員の表彰
・機関紙(論文掲載)の発行
・大会、講習会、イベントなどの開催
・航空教育に関わる調査研究、及び調査研究の受託・委託
・会員の研究のための支援と協力
・航空教育に関わる官・学・産・民の組織(団体)との協力と連携
・その他、本会の目的達成に必要だと思われる事業